TOB Official Blog

東大唯一のオリジナル曲制作・演奏サークル、TOB(東大オリジナルバンド研究会)のブログです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「記憶」曲評

おはようございます、こんにちは、あるいはこんばんは。1期のRAと申します。


昨年も本サークルのコンピレーションCD「開化」に曲評を投稿したのですが、「こう聴かれているというのが分かって面白い」「新たな発見がある」などとのお声を頂きまして、ならばと本年も調子に乗りましてこうして書かせていただきました次第です。自分もそうですけど、創作したものに感想や評価がつくというのは作者としては少なからず嬉しいものなのですね。


個人的な話をさせていただくと、2016年は自らの就職活動の惨敗に幸か不幸か分からない留年宣告が加わるという、凶星輝く厄年でありました。そういうわけで、何の因果か本年度も現役メンバーとしてTOBに関わることになったのですが、本来なら既に去っているべき人間として、せっかくだから少しでも何か遺していかなければという気持ちと、若い者たちの邪魔をしてはいけないという気持ち、半々に混ざった心境を抱えております。そのうちの前者、すなわち去り行く僕の遺物のひとつとして、当記事が後輩諸君の創作活動の香辛料くらいになれば良いなと思います。


まあ、単に文章を書くのが好きだからというのも大いにありますが。ハイ。


昨年と同じく、「コードとかの細かいことはよく分かんないけど、このへんがこういう感じでこっちはこう思ったよ!といった体で書いております。そういう意味ではやはり「曲評」ではなく「感想」と呼ぶべき代物なのですが、どうかお付き合い願います。


メンバーの名前については、CDに載っているものに準拠しています。同一人物なのに異なる名義を使ってる人もいますが、少なくとも内部メンバーの皆様は誰が誰だかは大体ご存知でしょう? 一応、ご存知でない皆様にも分かるような書き方をしたりしなかったりします。


なお、何故か本年は全編ともほぼ敬体です。ただの気分です。他意はありません。


***************************


01:A Bus StopA Bus Stop


正統派ポップロックといった感じの爽やかな曲からのスタート。このA Bus Stopというバンドは本サークルの2016年度合宿、通称「革命的バンドサークル夏合宿」で結成されたものなのですけど、2015年度のSUIKA BARSといい、こうやってちゃんとコンピCDまで昇華させるのは偉いなぁと思います。両バンドとも、ボーカル担当の鬼神Y. Kuroseメンバーに圧力をかけてバンドを存続させ、音源制作までこぎつけたとか何とか聞きましたけども、本当のところはどうなんでしょう? いや、どちらにせよ褒めてるんですよ。褒めてます。ハイ。


わくわくするようなギターリフから始まり、「わん、つー、すりー、ふぉー!」の掛け声。わずかにハネるリズム、全編に渡って入っているボンゴやサビで入るタンバリンといったパーカッション群、キーボードによる踊るような裏フレーズ、それら全てが合わさって、気持ち良い軽快さと仄かな憂鬱を伴う明るさが表現されています。それが大変歌詞とマッチしているんですよね。


その歌詞の方は、とある学生男女の淡い恋愛をそれぞれの視点から交互に歌うもの。Kurose女性側ナガトモが男性側を歌うツインボーカル仕様で、サビにはコーラスも入る豪華仕様。個人的には、「ちょっといつもと違う気がして毛先少しだけ巻いてみたの あの人は気づいたかな?」というフレーズが好きですね。同じテーマでもっと危ない曲を平気で書くような人間とバンドをしている身なのもあって、この純粋な甘ったるさは大変新鮮です。


そういえば、合宿の際「こんな恋愛したことないから歌詞を作るのが大変だった」というような裏話を聞きましたが、大抵の人間には多分こんな経験ないのではと思います。そうでありながら、この曲に限らず、世の中ではこういった系統の歌詞がたくさん書かれています。ある種の理想を詩にしてメロディに乗せる、それは歌を創作する上でのひとつの醍醐味ということなのでしょう。そういう未経験を歌うことが、このバンドにとっての「革命(※合宿での共通作曲テーマのひとつ)」であったのです。


ミックスはスタジオが展開しているサービスに委託したようで、そりゃあ上手いわけだよぅ……




02:駆け出しの忍者's12345!


パンク! これはパンクですよ諸君!


「各々が未経験の楽器で演奏する」というコンセプトで組まれたこの駆け出しの忍者'sというバンド。結成から1年以上経って、ライブでも何だか最近微妙に上手くなってきたので「駆け出し」でもなくなってきたのですが、以前は正直なところいくら何でも下手過ぎて聴くのがキツいという印象ばかり先行していましたから、バンドのイメージを残しつつ人に聴かせるという意味では今くらいのヘタウマ感がちょうど良いんじゃないかなという気もしています。でもあまり上手くなり過ぎても困りものなので、これからは加減が大切です。金魚草(そういうバンドがあるのですが詳細は各自でお調べ下さい)が上手くなってたら嫌なのと同じですよ。


それはさておき、やきそばパンマン(この人、前曲では「僕はなんにもできないし冴えない男だからとか歌ってたんですよ?)が作詞・作曲を一手に担うこの曲。曲名でもある「12345!(ワンツースリーフォーファイブ)」が、特に何の意味も持たないのにこれでもかとばかりにしつこく繰り返される。昨年の「開化」でも「イマジナリーライン」で同じことを申し上げましたが、いわゆる「リンダリンダ」手法です(「イマジナリーライン」の場合は意味のある歌詞の連呼だったので、こちらの方がより「リンダリンダ」に近いですね)。この曲だけでなく、駆け出しの忍者'sはこの手法を用いたキャッチーな作風が特徴です。演奏技術や細かい作曲技巧を二の次にしてキャッチーさを重視するという点が、まさに古き良きパンクロックといった感じで最高ですね。曲自体も2分弱と短いので、何回でも聴いていられます。


ライブでは毎回歌詞が異なるため、この曲そもそも固定歌詞が存在したんだなぁくらいの驚きがありました。そういうわけでこの曲の歌詞は「12345!を引き立てるためだけに存在する文字の羅列くらいに思ってもいいような気はしますが、この歌詞の男気溢れるアグレッシブな感じもいかにもパンクで良いですね。あと、台詞として叫ばれる「え? 何ビビってんの、何でお前飛ばないの? 罰ゲームとか言い訳にならないからさァ!」がすごく好きです。パンクっぽさをよく押さえているなぁナガトモやきそばパンマンは。彼最近やきそばヘアーじゃなくなったんですけどね。




03:駆け出しの忍者'sI wanna be a funky boy


あいわなびぃーーーふぁんきぼーい、いぇす! \いぇす! いぇす!/


僕は全英詞の邦楽というものが好きではないのです。というのも、そもそも歌とは、非言語的表現手段であるところの音楽にわざわざ言語的表現手段である詩を乗せていく、ある意味では対立する二つの表現を同時に成立させる行為であり、どうせやるのであればそれぞれの長所を活かして二重に受け手へ伝わるような形であるべきと思っているわけですね。そして邦楽の受け手とはほとんどが日本語を母語とする日本人ですから、当然歌詞も日本語で書かれていなければ大多数の受け手にはその意味するところを分かってもらえないのです。ゆえに全英詞などもってのほか。日本人は他国と比較しても相当英語がニガテなようですしね。たとえかっちりした文法は理解していても、実践機会が無さ過ぎて喋るのと聞くのがダメダメ。英語で歌を聴いても、その貧弱な知識と経験で辛うじて分かるところ以外は何言ってるかも分からない。


ハイ、で、その「分かるところしか分からない」のがまさにこの曲であり、そしてこの曲はその「分かるところ」だけ分かってもらえれば十分にその目標を達成していると言ってよいと思われるのであります。やきそばパンマンが実際どう思ってるかは知りませんし知ったことではありませんが、結局「I wanna be funky boy」さえ伝われば、残りの歌詞はあろうがなかろうが、歌えていようがいなかろうが、この曲は成立するのです。そして彼らはパンクバンドですから、それで全く問題なく良い曲であると言えるわけですね。いち聴き手としてはそのように思っております。


曲調の方は、「12345!」と同じ駆け出しの忍者'sですから、同じような印象を受けるのが当然と言えば当然なのですが、こちらは作曲が加藤ファンキーくんなのですね。違うメンバーが同じような作風で曲を作れる、素晴らしいことです。パンクとは技巧的には簡素さを求めていくものですから、そんな難しいものでもないと言えばそうなのですけど、それでもです。




04:raincoat「群青」


出ました、TOBが誇る変態バンド第一弾、raincoatです。昨年度のコンピレーションCD「開化」では彼らが開幕を飾っていましたが、本年度は前3曲から一転ダークサイドへ堕ちるその瀬戸際のように配置されています。諸事情によりバンドは消滅してしまったようで、仕方ないとはいえ大変もったいない。


3/4とも12/8ともつかぬベースリフ、それがバスドラムによって3/4に規定され安定をみたかと思えば、すぐにその16分音符3つ分を1拍とした5拍子に転換、ドラムのキメを挟んで疾走感のある4拍子に雪崩れ込んでいきます。このイントロだけで僕としてはもう既に満足です(相変わらず変拍子が大好きなもので)。そのままAメロを駆け抜け、暗闇を彷徨うようなBメロを経由して、海岸を走るようなサビへ。このサビが何回聴いても何故かカルピスかサイダーのCMで流れてそうという印象。そういう感じだと思って聴くとそんな気がすると思います。ここからまた速度を落として2番に突入するなど、次々展開されるHaggy#ワールド。彼の作る曲はかなり技巧的ですが、それでありながら聴き手をあまり選ばない聴きやすさも残せるのは流石だなぁと(曲によりますが)。


歌詞の方は印象派というか、「出来た曲を聴いて何となく思ったことを歌詞として書いてみたらこうなりました」とでも言いそうなもの(違ったらごめんね)。言葉選びの特徴として、対称性・対照性の意識が強いですかね。「低い/遠い」「鈍く光った/輝き出した」「東/西」とか。よく使われる作詞手法ですが、使う人と使わない人、きっちり分かれている印象があります。また、暗鬱としたAメロ・Bメロの歌詞に対して、サビの「見えてる物が見えなくなったって 何回だって立ち上がるんだってというフレーズが解放的で心地良いですね。このフレーズがあるからカルピスかサイダーっぽいのかもしれません。


あ、7→7→6→6→7→7→6→6拍子のギターソロお疲れ様です! よく弾けますねぇこんなの……




05:掌「ベリードボーンズ」


で、我々はいよいよ暗黒面へ向かうわけであります。僕ことRAドラムで参加している変態バンド第二弾、掌です。もっともその変態性は、様々なベクトルに強烈な個性を持つ各メンバーによってraincoat以上に鮮烈を極めています。ボーカルのルカさん(唯一の良心)にはいつもご迷惑おかけしております。バンド自体はこの一年間で様々な紆余曲折を経て現在の形に落ち着いておりますが、細かい話は割愛ということで。


ところで、掌には結成当初もう一人まともな精神を保っていた人間がいまして、それが本曲の作詞・作曲担当、小川夕日でした。お聴きになれば即座にご理解いただける通り、彼の良心・常識・観念はこのバンドへの参加を通してすっかり塗り替えられてしまっのであります。いや、これは彼がもともとその心の奥底に秘めていたもので、それがこのバンドに参加するなかで露呈しただけという説もあります。


というわけで、彼としては異色とも言える雰囲気を放つこの曲ですが、5/86/8を組み合わせたイントロ、3拍子でゆったり通過するAメロ・Bメロ、サビで4拍子に解放され、そして6拍子で締めるという、変拍子をふんだんに活用して混沌とした世界観を構築したものとなっています。低音を主体とした重めのギターリフとそれを徹底的に支えるベース、随所に凝らされるキーボードフレーズ、そして透明感のあるボーカルの歌声。これらが重層的に響き合い、壮大なサウンドを生み出しています。2番の後の間奏後半、狂ったようにランダムに鍵盤を押すキーボードソロが、どういうわけか曲にぴったりマッチする不思議。5分半があっという間です。


もう救いはない」と歌う通り、歌詞は終わりのない暗闇を永遠に彷徨い続けるようなもの。彼もHaggy#もそうですが、ある意味で表面的な情景/場景描写が特徴の「A Bus Stop」のような歌詞の書き方とは異なる、自身に隠されている精神の洗い出しみたいな動機で独り悶々と考えていくような作詞が積極的に行われているように感じます。「ベリードボーンズ」とはスマホゲームアプリ「Buriedbornes」のことで、本曲はこのゲームを基に作られたものだということなのですが、「埋められて生まれた者達」の探求という意味では何か共感するところがあったのかも分かりません。たまたまと言ってしまえばそれまでですが、そもそもそういう発見はあまり意識的に起こせることではありませんので。




06:時田はるか「アガリ」


救いがねぇ……


奇才的音楽性を惜しげもなく放つ時田はるか(今年はこの名前で行くことにしたようですが、毎年のように名義が変わってます)がコンピCDに捻じ込んでしまった、怪奇極まるこの曲。TOBはオリジナル"バンド"サークルですが、入部から3年経っても彼はバンドというものの何たるかを理解する気がないようです。こういうのが一人いるから面白くなるというのはあるのですが、バンドとして活動している時にはもう少しバンドサウンドにベクトルを寄せてほしいと、僕は彼にずーっと前から繰り返し繰り返し申し上げております。未だに寄せてくれる気配はありません。


とか何とか言いつつも、個人的にはこの曲自体はとても好きです。往年のホラーゲームのBGMのような雰囲気四方八方から聴かされる低音、不協和音、ノイズ、旋律めいた何か、クワイヤー。それらが一瞬途切れ、また鳴り出す。何かが起こりそうで、何も起こらない。そんな緊迫感を無慈悲に感じさせられます。


真夜中に暗闇の中で聴くと良いでしょう。出来ればイヤホンではなくスピーカーで。あなたの耳に届くあらゆる音がこの曲の要素になります。




07:Oyen Icedizzy


引き続きインスト曲。暗黒を抜け出したら急に曲調が穏やかになりました。僕はこのOyen Iceという人をよく知らないのですが、こんな曲を作る人間もいるんですねぇ。


ファイナルファンタジーⅩの影響だと思いますが、こういう曲を聴くと、僕の頭の中には、人が少ない南国の海辺のイメージが浮かびます。真っ青な空と白い砂浜、海はエメラルドグリーン。海鳥の鳴き声と、さざ波の寄せる静かな音。浜辺を見下ろす崖の上からの視点。燦然と輝く太陽の眩しさに、思わず目を細め――。


タイトルは「dizzy」すなわち「めまい」ですが、一口に「めまい」と言っても、頭がくらくらして目の前が暗くなること、視界がぐるぐる回ること、強烈な光を見て一瞬目が見えなくなることなど、様々な症状があります。僕は「目が眩む」方の「めまい」を感じたわけですが、皆様はいかがでしょうか。




08:BlackspriteW


Haggy#がひたすら4期をいじめるバンド(第一印象)。


12/8だと思ってたら実は12/164つ割りでしたという、Aメロ→Bメロの鮮やかなテンポ変化。間奏の6/4ラスサビ前に一瞬入る3/4。「群青」に引き続き、Haggy#節再び炸裂という感じです。raincoatでも掌でもブレない彼の作風はこのバンドでも一貫しているのですが、後輩たちに君の難曲群を演奏させるのは流石にやめてやれよと初登場時からずっと思ってましたし今でも思ってます。よくついていけるねぇメンバーのみんなも……


作詞は4期のヨネくん。今年度は本サークルの代表でもあります。つまりBlackspriteは、3期代表と4期代表が在籍するバンドになったわけですね。頑張って下さい。それはさておき、深い水("W"ater?の底から浮き上がってくるような構成の歌詞が、曲調とマッチしていて綺麗です。2セットあるABメロの対句的表現、それと「真っ暗な青い世界」が個人的には好きです。真っ暗なのに色があるという、固定的観念を振り切った言葉選びが素晴らしい。hinaさんの低音めでハスキーなボーカルも大変かっこいいですね。既にそうしてはいると思いますが、この特徴ある歌声をもっともっと積極的に活かす方法を模索していくといいんじゃないかなと思います。




09:Haggy#「或る休日のAM11:00


またお前かい! そう思ったでしょうけども、この曲での彼のスタイルは他の2曲とは違います。これはセンスが光る。


本来は録音においてノイズというものは敬遠され、音源に入り込むべきものではない余計な音として扱われます。ゆえに、録音段階でもミックス段階でも各担当者は何とかしてノイズをカットしようと奮闘する、これが常であります。空調の音がうるさいからとエアコンを切って、汗だくで録音したりもするらしいですね。


ところが彼はそれを敢えてしなかった。換気扇か何かの音、近所の人たちの話し声、時計の秒針、鳥の鳴き声、車のブレーキ音、その他有象無象の生活ノイズ全てを、この曲の要素として味方につけてしまったのです。それら全てが「或る休日のAM11:00」を表現している。CD音源ならではのアンビエンスが魅力の一曲です。


ライブでこの雰囲気を再現しようがないのが惜しいですね。それとも、同期音源でも使いますか?




10:A Bus Stopera


革命的バンドサークル夏合宿における共通作曲テーマ「」「革命」の、「」の方の曲。


満月が輝く夜に、街灯もない田舎道を散歩している時に歌っているような雰囲気。ゆったり歩いているくらいのテンポと、後ろへ引っ張られる重いノリが停滞感を生んでいます。ギターのふわっとした音色に加え、シンセサイザーとピアノが幻想的な雰囲気を形作っていて、オケだけでも世界観が完成しているという点では「A Bus Stop」と同じ意識を感じます。楽しい曲にしたいから楽しく作ろう、静かな曲にしたいから心を落ち着けて作ろう、そういった意識。作曲者たちの素直な意図が曲に乗っているので、聴き手にもそのまま伝わってくるのではないでしょうか。


重く閉塞的というだけでなく、歌詞にはある種のカタルシスが表れています。 人類は何千年もの歴史を経てきましたが、月を見上げながら「僕」はふと思うのです。人間とは愚かではないのか? 支配してばかり、見下してばかり、争ってばかり、そんな人間である自分もまた、ちっぽけな存在なのではないか? たまたまその日誰かと喧嘩して、それを後悔しているのかもしれません。たまたまその日誰かの陰口を囁いて、それが急に恥ずかしくなったのかもしれません。「僕」は、月に見下ろされながら嘆きます。でもその輝きは言うのです。それに気付くことが大事なのだと。その積み重ねが、新たな時代を作っていくのだと。月は、そんな人間の営みをずっと見守ってきたその存在は、「僕」にそう伝えます。きっと明日の「僕」は、新たな時代の一歩を踏み出すことでしょう。……というような物語がこの曲には詰まっていると感じられるなぁ、というお話です。


余談ですが、ドラマーとして、2Bメロ入りのキメが小気味良くハマっていると感じました。



11:ORAL HUMAN HISTORY「夜華」


「記憶」のラスト(誰が何と言おうとラストです)を飾るのは、ORAL HUMAN HISTORYが送る、いかにもエンディングといった雰囲気の一曲。


遅めのテンポで進行する6拍子に乗せて淡々と繰り返されるギターリフが寂寥を感じさせます。いつまでも繰り返すというのは、いつか終わることへの拒否であり、「サザエさん」めいた永遠なるループに安寧を見出そうとする意識です。そんな構成の中に現れる停滞はある種の自問であり、ふと至った疑問であり、しかし解答はやはりループ。よってこの曲は再びサビへ展開していくのです。同じ歌詞を叫び続けるこのサビが、「紅い華」を焦がれて「夜を待つ」のがこの曲における解だというわけです。どうせならフェードアウトで終われば良かったのに、とちょっと思いましたね。


――そして、TOBの「記憶」は次の世代に語り継がれるのです。



12:Daphne「オルタナティヴシティ」


……で? 何で入れたのこれ? ねぇ? 何で?


ホント入れりゃいいってものじゃないと思うんですが、困ったことに僕ことRAも参加しているこのおまけトラック「オルタナティヴシティ」。Daphneというバンドは正確にはTOB発ではなく、昨年度東京大学で開講された講義「ボーカロイド音楽論」、通称「ぱてゼミ」をTOB部員が受講しており、その期末課題(オリジナル曲の創作・投稿)のために結成されたものです。そのため、TOBの人間ではないメンバー、そもそも人間ではないメンバー(鏡音リン)も混じっています。なお僕は受講もしてなければそもそも東京大学の人間でもないので、参加こそしましたが単位的な恩恵はゼロです。


曲評ではありませんが、何も書かないのも面白くないので、曲紹介を。あくまで講義の課題であったために講義内容に沿う必要があったため、メンバーで話し合って講義からさまざまな要素を抽出し、途中経過はすっかり忘れましたが、結果として「ループ」をテーマにしました。それを軸に、他の多くの要素と合わせて「破壊された廃墟の渋谷で延々と同じ記憶を見せ続けられる」といった趣旨のショートストーリーを僕が書き(僕は歌詞レベルまで削ぎ落とす能がないので)、さらにそこからThanatosが捨象して歌詞にする、という手順を踏んでいます。そういうわけで、1番と2番の歌詞はほぼ同じ、Cメロで一瞬見える真相はラスサビで再び隠されてしまうという、夢も希望もない曲となっております。


恐ろしいことに、今年度も開講されている「ボーカロイド音楽論」で先日この曲が流されたとか何とか。一体どう扱われたのでしょう……


***************************


以上11+1曲、本年度TOBコンピレーションCD「記憶」の曲評を書かせていただきました。敬体で書くと何だか高尚に見えますね。


昨年度自分が「開化」に寄せた曲評を読んでいたところ、アニメ映画「心が叫びたがってるんだ。の一節を引いている部分がありました。小さい頃に「玉子の妖精」に「呪い」をかけられて以来話そうとすると腹痛が起きるという高校生の女の子が、クラスメイトの男の子と話したことから、歌なら問題なく声が出せることに気付き、クラスで行うミュージカルの主役を務めるというストーリー。


この主人公の女の子の言う「呪い」とは、ネタバレしてしまうと一種のトラウマなのですが、彼女ほど重度でなくとも、人間誰しも、伝えたいけれど伝えにくいこと、言いたいけれど言えないこと、言葉にしたいけれど言葉にならないことを抱えることがあると思います。それは社会的・環境的要因からであったりとか、単なる語彙力不足であったりとか、内的な問題が理由だったりとかします。そういう時に我々がアウトプットとして使うことの出来る手段が、オリジナルの曲を作ることであると僕は思うのです。


TOBメンバーでも、他のサークルでコピーバンドを組んでいる人はたくさんいます。組んでない人の方が少ないのかもしれません。それは重要なことです。楽器を演奏しようと思った動機は他のアーティストへの憧れから、という人は少なくないでしょう。あのバンドのあの曲がやりたい、この人みたいに演奏出来るようになりたい。そうした動機から、人は先人の生んだ曲のコピーを練習し、演奏します。クラシック界隈など顕著で、彼らは何世紀も前に作られた曲を(少なくとも譜面上は)未だにコピーしています。それはその名の通り「古典」の再現であり、クラシックはジャンルとしてそういう形で確立しているのですから、それで良いしそうでなければならないわけです。


ところで、ジャズやロックといった後発の音楽ジャンルに関わる者が、先人のコピーに終始するということ、これはどうなのでしょう。世の中にはそういう人間の方が数多くいるのでしょうし、別に真っ向から否定は致しません。ただ、せっかく自分を表現するいち手段に触れておきながらそれを目的としてのみ捉える、そこに僕はもったいなさを感じます(ジャズシーンのことはあまりよく知りませんが、彼らは譜面上のコピーの中にも常にアドリブという要素を取り入れて自らを積極的に表現しているのではないでしょうか)。


最広義のロックにおいては、その踏んできた歴史から考えて、そもそも「コピー」などという概念はあるべきでないと言って差し支えないかも分かりません。革新を求め自らを主張していく手段として、ロックという音楽は成ったわけですから。技術的な意味での継承は必要なことですから、そういう理由でコピーを行うのは、当然通るべき道です。しかしロックは手段です。自分はこう思っている、こういうことが言いたい、こんなふうに感じている、こんな人間なんだ、それを音(と言葉)で伝えること、それが元来の目的なのです。


そういうふうに考えると、我々がTOBという環境でわざわざ専門としてオリジナル曲を作っているということに、もう少し根源的な意味が見出せるんじゃないかなぁと。そう昨年の僕は期待して、曲評の最後に「ここさけ」を引いたのでしょう。「(不器用だけど)音に乗せれば何か伝えられる」という特殊技能、せっかくこんなサークルに入ったのですから、是非とも培っていってほしいものです。


以上です。参加者の皆様にとって何かの足しになれば幸いです。そうでない皆様、是非我々の「記憶」が詰まったこのCDお聴き下さい。

スポンサーサイト

Top| 【新歓企画】曲紹介/アルバム紹介第三弾【2017】 »

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

Top

HOME

TOB

Author:TOB
東大唯一のオリジナル曲制作・演奏サークル、TOB(東大オリジナルバンド研究会)のブログです。連絡先は
mail : tob5481930@gmail.com
twitter : @TOB_theOriginal (DM)
まで。

この人とブロともになる

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。